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海猫たちの小夜曲
第4章 冷たい海 ~海色のグラスと小麦色の少女③~
 あとは先生の言うなりだった。
 先生は、叔父のスマホを確保すると、先週、叔父が撮ったあたしとの行為写真をあたしに確認させたうえで、あたしのスマホにデータを移した。
「さて、次はご自宅に伺って、奥様と息子さんにお話をさせていただきたいんですが。」
「やっ……やめてくれ! こんなことを家族に知らせないでくれ!」
 先生の通告に、それまでうなだれていた叔父が、火が付いたように抵抗を始めた。
「そうはいきません。望海さんへの性的虐待はあなただけではなく、息子さんもでしょう。そしてあなたはそのことを知っていたはずです。そもそも、なぜ止めなかったんですか?」
「それは……ちょうど息子は受験で気が立っていたから……そういうことが息抜きになるんなら……それでいいかと思って……」
 叔父のあまりな言い訳に、あたしは自分が情けなくなった。

 結局、家族だなんだとおだてられて舞い上がっていたのはあたしだけだったのだ。
 叔父夫婦にしてみれば、あたしなんか秀隆の慰みもの程度にしか思っていなかったのだ。
 家族という言葉を信じていた自分が哀れすぎて、泣きそうになってくる。

「……聞いていて反吐が出そうになる理屈ですね。今からでも警察に連絡して、息子さんともども、望海さんに対して、罪を償われたほうがよいのではありませんか? 自分で連絡するのが嫌なら、わたしの方で連絡しますよ。」
 冷静なはずの先生が、このときは言葉に怒りをにじませて叔父に告げた。

「それだけは勘弁してくれ! そんなことになったら、わたしは破滅だ! 職も、何もかも失う! それだけは……それだけは!」
 叔父が、額を床にこすりつけて見苦しく哀願を始めた。あたしはこんな男に殴られて、いいように体を弄ばれていたのかと思うと、改めて自分が情けなくなった。

「……なら、さっさと家に連絡して、今から私が伺うことを伝えてください。それと息子さんと奥さんも家にいるように、とね。」
 先生の言葉に、叔父は震える声で家に電話を入れ始めた。

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