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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第6章 贈り物

「そうだ名前・・・?」
「どう書くかってあれ?んと、ウ冠に有る、それに倫理のリンで、宥倫。絶対に分からないと思ったよ。だって親は男の子につけた名前だもん。」
5
青いワゴン車のスライドドアを開け、ヒールに爪先を通し、持っていた傘を手にした時には雨はもうほとんどやんでいた。見上げると空はどこか薄明るい。夜明けが近い。
「それじゃ」
と声をかけた恵子に、
「うん」
と、宥倫(ゆうり)は短く頷いて微笑んだ。
それが二十分程前の事だった。恵子は自宅へ向かう車中、運転しながら宥倫との最後のベッドを思い返していた。
質問責めを始めてしまった恵子に、宥倫は面倒がらず応えてくれる。幼少の頃は男の子として期待もされていた…ということだった。
ウ冠に有ると書く「宥」という字には許すという意味があるのだそうだ。思いやりと寛大な心。それに道徳とか正義を表す倫の字を添えて、ゆうり、と読ませた。恵子の恵の字に心が入っている、と言ってた宥倫、・・・「ゆう」の字は優しいの「優」が好きだけど優秀になんてなれないから「憂」が良かったな、とこぼした。
憂(うれい)…悲しみを・・・、沢山抱えているんだな、と感じた。彼女を自分と取り違えた痴漢がネットの掲示板に書いたと思われる『報告します。恵子さんは、元男性です。胸も下も一応ちゃんとありましたけどねww それでも良いという方はどうぞ』という、あの書き込み・・・ワタルと名乗っていたその人物は、あの電車に恵子と一緒に乗った宥倫を恵子と間違えて襲ってしまった・・・ということか。そう考えると、それまで恵子の中に引っかかっていたものが溶けた。しかし、宥倫にとっては、それはまたひとつ心の傷になってしまっているのではないか、と気がかりにもなった。
「約束だから、データ・・・。」
「どう書くかってあれ?んと、ウ冠に有る、それに倫理のリンで、宥倫。絶対に分からないと思ったよ。だって親は男の子につけた名前だもん。」
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青いワゴン車のスライドドアを開け、ヒールに爪先を通し、持っていた傘を手にした時には雨はもうほとんどやんでいた。見上げると空はどこか薄明るい。夜明けが近い。
「それじゃ」
と声をかけた恵子に、
「うん」
と、宥倫(ゆうり)は短く頷いて微笑んだ。
それが二十分程前の事だった。恵子は自宅へ向かう車中、運転しながら宥倫との最後のベッドを思い返していた。
質問責めを始めてしまった恵子に、宥倫は面倒がらず応えてくれる。幼少の頃は男の子として期待もされていた…ということだった。
ウ冠に有ると書く「宥」という字には許すという意味があるのだそうだ。思いやりと寛大な心。それに道徳とか正義を表す倫の字を添えて、ゆうり、と読ませた。恵子の恵の字に心が入っている、と言ってた宥倫、・・・「ゆう」の字は優しいの「優」が好きだけど優秀になんてなれないから「憂」が良かったな、とこぼした。
憂(うれい)…悲しみを・・・、沢山抱えているんだな、と感じた。彼女を自分と取り違えた痴漢がネットの掲示板に書いたと思われる『報告します。恵子さんは、元男性です。胸も下も一応ちゃんとありましたけどねww それでも良いという方はどうぞ』という、あの書き込み・・・ワタルと名乗っていたその人物は、あの電車に恵子と一緒に乗った宥倫を恵子と間違えて襲ってしまった・・・ということか。そう考えると、それまで恵子の中に引っかかっていたものが溶けた。しかし、宥倫にとっては、それはまたひとつ心の傷になってしまっているのではないか、と気がかりにもなった。
「約束だから、データ・・・。」

