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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第7章 再会
     3

 階段を上りきり左へ折れる。この時間には営業を終了している駅構内のテナントを右手にちらりと見て、その奥を大きく右へ・・・。突き当りにトイレがある。
 少しだけ独りで休みたかった。スロープを上りきると女子トイレが左側に口を開けている。そこには二人が個室の空き待ちで短い列を作っていた。後に続いて並ぶ。右奥の開けたスペースに鏡と洗面台があり、パウダールームになっている。数名の若い女達が思い思いに鏡を覗き込んでいる。
 列に並んですぐ、用を済ませた一人が左奥から現れ、入れ替わりに列の先頭のスキニージーンズが奥へと消えた。時計を確認する。まだ十分以上ある。ゆっくりしてから化粧を直しても十分な時間だ。後ろから誰かがやってきて恵子の後ろに並んだ。この時間でも利用客が無くならないのは、さすがに日本一の繁華街、東京の副都心だ。
 恵子の位置から奥の個室へ続く廊下が見渡せる。個室から出る人の気配。カン、コツンと錠を外す金属の堅い音が響き、立て続けに二つのドアが開いた。
 中ほどの右側とその斜め向かい側だった。出てきた女と入れ違いに恵子の前のミモレ丈スカートが動く。自分もあとに続く。前のスカートは左奥のドアに消えた。右側の個室、手前から二番目のドアに、身体を横向きにしてカニ歩きで身体を滑り込ませた・・・その時だ。
 背後に人の気配を感じた。軽く右の肩を触られ、ギョッと驚いて振り向く。人影はすでに個室の壁のこちら側にいて、にっこり微笑みながら後ろ手に個室のドアを閉めた。
 宥倫(ゆうり)の笑顔がそこにあった。
 声にならない恵子はただ呆然と、その目の奥を覗き込む。手を振るようにして胸の前に右手を挙げ、その腕をゆっくり伸ばして恵子は宥倫の肩口に触れようとした。宥倫も左手を出して、その指を恵子に絡めた。指を絡め手をぎゅっと握る。きっと来るだろう・・・と思っていたし、一本前の電車の車内で見かけた気がしていたが、まさかこんな場所で合うことになるとは…。
「して、いいよ。トイレ」
 宥倫が囁く。声に出さずに首を振り、口だけで(だいじょうぶ)と言う恵子。宥倫は口づけするのかと思うほど顔の近くまで口を近づけて、声には出さす吐息だけで言葉にした。
「見てたよ 電車の中。」
さらに続ける。
「座ってされるって、どーお?感じた?」
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