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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第3章 深夜の公園
 ハンドバッグから車のキーを取り出し手の中に握りこむ。ドアロックを内側から解除してドアを開けた。車内のきーんという静寂が屋外のざーっという別の種類の静けさに変わる。キーだけ持ってハンドバッグを助手席に残し、黒いヒールを左右ともにアスファルトにつけると、右手を支えにしてシートから身を起こす。ピンクの膝丈スカートが捲れそうになって、手で裾を払って少し後ろに引っ張る。運転しているうちにずり上がって、すごいミニスカート状態になってしまっていたような気がして、誰にも見られていないと思いつつも少し恥ずかしかった。
 ばふ。
 ドアを閉めロックを確認すると、右手の人差し指にキーリングを通した。まだあちこちに小さな水たまりが残っていそうで、駐車場からジョギング外周路までどこを歩こうかと、少し思案した。結局、降りた車の前を大きく右の方へと回り込み、水たまりを迂回して林に囲まれた小路を通り抜けることにした。街灯の灯りが届かない闇のトンネルが口を開けていた。
 真っ暗な地面は、足を踏み出す度、そのまま地面に足ごと吸い込まれそうにさえ思われた。短い林の間の小路を抜けると左手奥にトイレの明かりが見える。ひと気は無さそうだが、このトイレの前は素通りしたくない。避けるように右へと進んだ。このまま反時計回りに公園を一周して何もなければ帰ろう、と、そう決めて歩き出す。
 深夜の誰もいない、雨上がりの公園。考えようによっては気持ちがいい。街灯も結構たくさんあるように思える。誰かに会うとしたって、その全員が危険という訳でもないだろう・・と、その時は自分に都合のいいようにだけ考えていた。
 公園はちょうど中央を横断する広い通りがある。そこを過ぎると全体の四分の一を歩いたことになる。その先には北駐車場があり、そこにも夜な夜な人と車が集まることは付近の女子高生達なら誰でも知っている。日暮れ以降は絶対に近づかない、踏み入ってはいけない場所として知れわたっていた。
 もう少しで半分まで来る。と、少し遠くで明らかに人の声が聞こえた。何と言っているのかまでは分からない。ナンパの類だろうか。


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