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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第4章 追跡者
     3

 その日、耀司(ようじ)はシフト休みで、これといった当てもなく街へ出ていた。いつもならこれからが勤務時間。電車がなくなる前に一周だけ、と、この路線に立ち寄った。自宅とは逆方向。また戻らなくていけない。二号車が停まるあたりでホームが広くなっている場所で、薄着になってきた女性達を見るでもなく眺めて列車の到着を待つ。たいていは彼氏連れか女子三人の輪になっていて、とりとめのないおしゃべりに花が咲いている。
 この時間でも先頭付近の車両はぎゅうぎゅう詰めになることを耀司は知っていた。綺麗な女性、というのもどちらかと言えば少ない。それに外国人が多い、と耀司は思う。あそこでは自分が居たい場所にいられない。結果的に成功率が低く、秘密の遊びには向かない。敢えて二号車で軽いタッチで嫌がらないでイタズラに付き合ってくれるような堕天使との出会いを求めていた。二年も前の事になるが一度警察沙汰になったことが今も忘れることの出来ない教訓になっていた。これといった相手もみつからないまま列車の到着を待っていた。
 別に一本遅らせても構わなかった。移動すること自体が目的ではない。空振り…と思ってのんびりしている耀司の目に、三番線のホームをこちらへ小走りにやってくる白いブラウスが飛び込んできた。Vネックの胸がおおきく開いている。ほとんど胸の中ほどは見えてるんじゃないか、と思えた。その口元には微笑みを浮かべていた……耀司の目にはそう見えた。
 笑みを浮かべた堕天使がこちらに近づいてくる。
 近くを過ぎるとピンクのミニスカートが鮮烈で、通り過ぎると膝の裏側に何とも言えない色気を感じた。
 自然と体が動いた。間違いない、彼女は受け入れてくれる。何よりの証拠に、彼女は他に女性などだれも並んでいない先頭車の先頭ドアに向かっている。どんどん鼓動が高まった。大股でゆったりと歩き出す。その燿司を男二人が追い越していった。彼女の後を追いかけてついて行く。連れ?ではなさそうだ。後追いか。彼女が男たちのターゲットだということは、ここへ来るまでに既にそういうコトがあったと言うことだ。
 走りだしたくなる気持ちを抑え、自然を装い追い付くと、堕天使と後追いの男たちが列に並んでいるところだった。
 降りる客と乗り込む客でホーム上はカオスだ。


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