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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第1章 はじまり
 ショーツを下げようとしていた彼の手は、私の拒絶を繊細に受け止め、優しく、しかし諦めることなく、再び下へ下へとショーツの線をなぞるように降りていった。その瞬間、私はもしかしたら彼の右手の目的は邪魔者の下着を下ろすことではなく、そっとその上から中へと侵入することだったのかもしれない、という考えが浮かんだ。
 このまま少し様子を見よう。
 彼の手技に酔わされ、考えるでもなくただされるがままに、何かを待っていた。
 やがて彼は思わぬ行動に。優しいその右手のおそらくは長い指、その指先はクロッチレスのショーツの割れ目ではなく、脇からクロッチ部分をたぐりよせ、私の右の内ももからその場所へと目的地を求めて動き続けていた。
 まもなく彼はそこへとたどり着く。その中央の、その場所。
 身じろぎひとつ出来ない列車内で、私の思考はとっくにどこか遠くに飛んでいて、今は暑さも眠気も感じない、ただその敏感な場所の中のこことは違う別の世界で、彼のこれから始まるであろう行為の成り行きに全神経を集中した。
 入ってくる。
 …きた。

 その瞬間、ほんの少しだが、さらに身をよじり声を抑え快感に耐える。そんなスペースがこの満員の車内にまだあったことが、自分なりに意外だった。私の反応を拒絶ではないと素早く感じ取った彼は、さらに奥へと進む。ピクンと身体が反応すると、彼はその場所へ二度、三度と愛撫を繰り返す。
 強く目を閉じた。そうすると動いている車内で、意識の全ては私の中の彼の指先に集中出来た。私の中の彼以外の全てのものは止まって感じられた。あの中だけが熱くたぎっている。
 彼はさらに奥を望んだ、…しかし決して突き上げる、と言うような激しいそれではなく、やさしく優しくただ奥へと進む。
 彼の手技に集中しながらも少し私は落ち着いた。どちらかと言えば奥派でない。そんな私の反応を彼は見逃さない。再び一気に引き抜く。思わずのけ反りそうになる。そしてまた奥へと進む。
 そんなことを何度か繰り返しているうち、列車はいつしかゆっくりと駅に滑り込んで止まった。開くドアは反対側。ここでは乗降客は少なく、私の周りには動く人もいない。相変わらず密着した空間で誰にも知られてはいけない秘め事が今も続いていた。
 次の駅では降りなくては、とだけ、頭の片隅に小さくメモった。
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