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淫戯日記・恵子 ~続けてもいいですか~
第6章 贈り物
 恵子がどちらを向いているか、相手には見えている。車の中で周囲を見回した。そして発見した。左後ろのはるか向こうに、あの青いワゴン車だ。ココからは十台分以上、いやもっと離れたところだった。何をするつもりなのか分からない。じっと見つめるが、車内に人がいるのかどうかは分からない。カーセキュリティらしい赤い小さな光が点滅しているのがわずかに確認できた。
 メールが続けざまに来る。
『どうした?怖くないから降りて、お散歩しよう。そこから右斜め前。小道が見える?』
 恵子はドアを開け、助手席の足もとから折り畳みの傘を拾い上げると、ヒールでアスファルトを踏んだ。上半身だけ捻って助手席からハンドバッグを引き寄せる。向き直ると膝に力を込めた。立ち上がり傘をさし、ドアを開けたままもう一度青いワゴン車に身体の正面を向けてみる。見ていることが分かるように。二秒、そうして、それからドアを閉めた。
 振り返りそのワゴン車とは反対方向・・・右斜め前の小道に進む。公園の中は街灯が、それなりにありはするが、雨の夜で木々は真っ黒い闇を作っている。その向こうは全く見通すことが出来ない。
 少し歩くと広い遊歩道の交差点が現れた。
『斜め左の道を進んで』
 今のところ、バイブのスイッチは入れられていない。試されているのかも・・・。真っ暗な公園で左右の林の木々の間も真っ黒い闇が口を開けている。その木陰ならどこにでも隠れられる。どこかで見ている。誰かいる。心細かった。
 スマホに『怖いよ。どこへ行けばいいの?』と打って送信、様子を見る。
 すぐに返事は来た。
『2番目の角を右に曲がったらベンチの前で待って。』
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