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恋人はスーパースター
第2章 如月隼人の一日



"N"の有能なマネージャーは、早朝にも関わらず、すぐに女を引き取りにきた。

マンションの地下駐車場に、二台の車が到着した。

フルスモークのナニワナンバーの黒いワゴンに乗せられて行ったその女の行方は、この先、どのような運命が待ち受けているか、誰にも分からない。


「じゃ、隼人くんは、こっちの車に乗ってね?」


隼人は、そのまま、マネージャーの車、プリウスに乗せられる。

車の中には、すでに樹の姿があった。

その容貌は、黒いアルマーニのスーツを着こなして、顎には無精髭が生えてて、一層ワイルドさに磨きがかかっていた。

彼は、眠たそうに欠伸をしている。


「ふわぁ、眠い。隼人、また女を変えたのか?」


「あ、樹さん、おはようございます」


「うぃっす、隼人。朝からあの黒いワゴンを見るはめになるとはな…なんか、荷馬車に乗せられて売られて行ったあの悲しい曲。ルナルナルナルナ♪って歌いたくなるわ」


「…樹さん、ルナルナじゃなくて、それドナドナじゃなかったですか?」


「………」


「そうなんだよ、樹。隼人くんの女を宛がって失敗したのは、これで何度目になるか…」


慌ててマネージャーは、二人の会話を遮るように、愚痴をこぼしながら、エンジンをかけた。

樹は、先程の会話に興味を無くしたのか、窓の外を見ながら、欠伸を繰り返している。

隼人は、後部座席にドカっと座り込み、長い足を組む。


「じゃあ、もっとましな女をよこせ」


隼人は、基本、樹には、敬語を使うが、マネージャーには、素のままだった。


「うーん。隼人くんは、飽きっぽいからな。こちら側としても、これ以上事務所の力で探すのは、難しいよ」



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