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恋人はスーパースター
第8章 ほんとうの気持ち
その日の夜、柚葉は、"N"のレコ-ディングスタジオに足を運んだ。
彼女は樹の妹であり、MMEの主要優待株主のエドワ-ド・ジャックスホ-ド・ボルカンの娘であった。
滅多にコネを使ってスタジオに現れたりはしないが、顔パスで、こうして堂々と中に入れる。
「柚葉さん…珍しいですね?」
入り口付近のロビ-で、楠が顔をひきつらせながら、柚葉に声をかけてきた。
「あら、どうも!この節は、わたしの親友がお世話になったみたいで」
「あ、えっと、樹に用かな?今、レコ-ディング中だから…もう少し待って」
「今日は隼人に用があるの!!!」
「隼人くんは、ダメだよ!!!今、ものすごく荒れてるから!!!」
「ふぅん、なんで荒れてるのかしら?」
柚葉が楠に詰め寄ると、彼はハラハラしながら、後ろに後ずさる。
ドンと壁に当たり、逃げ場がない。
そこに柚葉が腕を組み、鋭く冷たい瞳で睨み付けてくる。
「包み隠さず、言いなさい?」
その圧倒的な凄みは、MMEの社長よりも、恐ろしい。
「君の親友のことでだよ!!!彼の商品価値が下がると思って、隼人くんに偽の誓約書を見せたんだ!」
「ば、ばっかじゃないの、楠!!!あなた、そんなに首にされたい?」
「ひっ、柚葉さんが言うと本気に聞こえる!!」
「本気よ?何なら、わたしがお父様に頼んでMMEごと買い取ってあげましょうか?」
彼女ならやりかねないと思った楠は、素直に非を認め、頭を下げる。
「す、すみません、わかりました!今、隼人くんに、僕から説明を…」
「その必要は無いわ」
「え…?」
「楠!!彼の本心を聞き出せるチャンスを作ってくれて、ありがとう」
そう言うと、柚葉は、ふんと鼻を鳴らして、颯爽と楠の前を通りすぎて行ってしまった。
残された楠は、小娘相手に腰を抜かして、暫く立てないほどに、恐縮してしまっていた。
「…柚葉さん…君は何者なんだよ、一体!!!一介の女子高生にしては、ハクがありすぎるだろ…」
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