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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第10章 墨の華~過ぎし日の回想録
「……これで最後、でも」
胸の際どい場所にあった痣に口づけた後、僕は汚されなかった反対の胸に口づける。僕だけの刻印、それが欲しかったから。
「それは……ぁぁ……」
「嫌だった?」
「嫌では……ないです」
僕を見て潤む瞳。
堪らずに立ち上がり、奏多の負担にならないよう、椅子の肘掛けに手を乗せながら、彼女の唇にそっと唇を重ねる。
「……奏多……」
「ぁ……」
小さな声を一つ上げたが、奏多は僕のキスを受け入れてくれた。
重なりあう唇と唇。奏多は唇まで柔らかい、まるでマシュマロをかい摘まんでいるような感触。
重ねては離し、また重ね合う。……無理強いはしない、奏多が僕を本気で受け入れてくれるまで。
「柔らかいね、唇も肌も……。頬も柔らかい」
「……ん。私、恥ずかしいです」
「恥ずかしくない、僕は思ったままを言っているだけだからね」
「だから余計……」
触れた頬がサッと赤く染まる。あぁ、なんて純粋なのだろう。
奏多達より少し早く社会に出た僕としては、この初初(ウイウイ)しさが眩しく感じるほど。
「奏多……愛している」
「聖さん、私……」
「本気だよ。僕は奏多が愛しい。巽にも渡したくないほどに……」
「巽……さん……」
巽の名を出した途端、彼女は躊躇うような素振りを見せた。……あの日、巽となにがあったのか僕は知らない。予想は出来ても内容を細かくまでは分かるわけがない。
巽とどんなやり取りがあったのか、知りたい気持ちはあるが、聞かないほうがいいこともある。