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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第11章 二夜の過ち

『ポチャン』と、天井の水滴が湯に落ちる音が響く。
静かな檜風呂に、一人湯に浸かっている私。
こう言ってはなんだけど、一般的なワンルームの私には、手足を伸ばして入れる風呂なんて無い。

「ここは、なにもかも広いね」

私だけじゃもて余すような湯船、温泉のような洗い場、別にシャワーブースもあり、本当に温泉に来たような気分。……首元の痣さえなければ。
一度や二度、湯で温めたって、痣は簡単には消えない。それくらいは分かるよ。

「初めてのキスマークがこれなんて……私も相変わらず」

初めての男性があれで、二回目は巽さん。
初めてのキスマークがこれで、二回目は聖さん。
浮き沈みの激しい私の男性経験。

「でも、あれ?
私はなぜ、巽さんと聖さんは大丈夫なんだろう」

嫌だったのに、怖かったはずなのに、巽さんと聖さんだけは素直に身を委ねてしまうのはなぜ?
聖さんは分かる、あの話を聞いたから。巽さんは……。

「瞳……。
真面目な瞳を見たから」

聖さんも真摯な瞳をしていた。だけど巽さんは、私に対する嘘のない瞳をしていたのが印象に残っている。
どちらも真剣な瞳だよ。
でもね、巽さんと聖さんでは微妙に違ったの。
どこがと問われたら、正確には答えられないとは思う。話す内容も、私に向ける感情も、ほとんど同じなんだけど、私を見る瞳が……あぁ、言葉にするのが難しい。

「一緒の街に居たなんて、私は全然知らなかったくらいだもの」

湯船の端に手をかけて、昨日の聖さんの話を思い出す。

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