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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第12章 聖と巽
◇◇◇
『巽が来る』と言った時の彼女の表情。戸惑い、喜び、複雑が全て入り交じったような微妙な顔をした。
巽は奏多になに一つ話していない、それを僕は知っているだけに……。
(だからあんな真似をした)
僅かな望み……。
女性を抱いて中出ししたことなんて、僕でさえ一度も無い。そこは人よりも配慮はしていたつもり。
だが……奏多には……。
万が一の可能性。もしそうなってくれれば、巽から彼女を奪えるという僕の打算。
(いや違う……)
奏多と一つになった時の、えもいわれぬ喜び。
僕のモノを締めつけ、複雑に絡みつく中。
僕を受け入れも、嫌がることも避けることもしなかった奏多。
今までセックスには冷淡だった僕が、初めて夢中になり最後まで欲しいと感じたあの感覚。奏多だけが僕の理想を叶えてくれた。
……だからこそ、生の奏多を噛みしめながら、中に出すことを望んだ。
「……聖さん?」
「ん? あぁ、すまない」
想いのほうが先に……。
こんなことも、普段の僕には無いこと。
社長息子だと言われ、周りに気を張り詰める日々。それが当たり前だと思っていたのに、彼女一人で僕はこんなに変わる。
「後はなにを話せばいいのかな? あまり面白くはないよ、巽とは違い引かれた路線を歩んだ僕の話なんて」
「それでも、聖さんのことを聞きたいです」
「僕自身?」
「……はい……」
彼女に話せることは少ない。伊礼の影で育ってきた僕では。
『古い慣習』が僕を縛った忌まわしい記憶。