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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第12章 聖と巽
◇◇◇
「…………」
通いなれた道を、俺は車を走らせている。
聖から連絡を受けた時、どれほど驚いただろうか? 俺が居ながらという思いと共に、もう一つ考えたのが聖のこと。
「……諦めてはいないだろ」
……奏多を。
原因は俺だが、一緒に奏多を見ていた聖の目を思い出す。まるで理想に恋い焦がれるようなあの瞳。俺だけではなく、聖も奏多に恋をした。
「一度は諦めたんだがな」
交差点で停車中に、煙草を取り出し火を点ける。
普段は吸わない、こんな休日くらいに気まぐれに吸う程度。前はヘビーと言われるほど吸っていたが、理由があり半禁煙。慣れると気にならなくなるもんだ。
「……奏多が伊礼物産に入社したから」
ふぅーと煙を吐き出し、車を発進させてまた物思いに更ける。
……諦めようと思った。
親父が俺たちを呼び出したのもそうだが、こんな汚れた俺が奏多になにを言える? 奏多が気になりながらも、差し出される女を抱いていた俺がだ!
「諦めきれねぇんだよ」
今日はやたら信号に引っ掛かる。ハンドルにもたれかかりながら愚痴を溢すのは俺らしくないが、奏多のことだけは……俺はどこまでも弱い。
あの時、酔った奏多を連れ出し抱いたことに後悔はない。男を怖いものとして見ていた奏多に、根気よく理解させた、俺に心を開いてくれた。それがどれだけ嬉しかったことか。
それなのに、また男を怖いと思わせる出来事など……話を聞いた時は、ぶん殴りたくなったさ。