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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第13章 付き合ってみる?
三十秒、一分と体感的な時間が流れるが、奏多は顔をあげようとはしない。待って、待って、二分も過ぎた頃か? 漸く顔を上げた奏多は俺と聖を交互に見て困惑の瞳。そりゃそうだろうな、あの言い分じゃ。
「私は……分かりません。そもそも選ぶ資格が私にありますか? 聖さんも、巽さんも、私にとれば雲の上の存在なんです」
「だからそれは偏見だと言っただろう」
「そうだね、僕も巽と同じ意見だよ奏多。僕たちは地に足がついている普通の人間、特別なことなんてなにもない」
「でも! 伊礼物産に居る限り、私には遠い人です」
「社内の立場なんか関係ない、俺なんかは正式に属してもいないぞ?」
「いつかはそうなるんじゃないですか巽さん?」
「さぁな。俺は俺のやりたいことをやる、それだけだ」
会社に居れば、伊礼の名だけでこうなるんだよ。俺はそれが大嫌いだがな。
聖は……なんだ、伊礼の名に媚へつらう女を嫌う。
どのみちセレブとかいうやつには無縁な俺たち。普通を好み、純真さを好む。……それが奏多。
「遠いというなら近くになるかい奏多? 僕は社内で噂になっても構わない」
「……え?」
「聖?」
「今までのように避けないで、堂々と奏多に付き合えばいいと思わないかい巽?」
「社内……」
「外枠の俺が不利じゃないかよ」
「奏多を迎えに来れば済むことだよ巽。お試しに僕と巽、双方と付き合ってみる。そうしたら別の見方も出来ると思うからね」