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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第13章 付き合ってみる?
あの個室の時の記憶があったのか、俺はすぐに眠りに落ちたとばかり思っていた。爽やかな香り……か、奏多に近づく時は更に気をつけなきゃならんな。
俺がいつまでも私案していても始まらんと、奏多の手を引き庭へと出た。とはいえ、俺も深く説明出来るほど、この庭を知っているわけじゃない。二年ほど住んだが、庭に出たのは数える程度なんだ。
「近くで見たほうが綺麗。秋色って私は好きです」
「紅く燃ゆる秋の紅葉か、俺も嫌いじゃないな」
「あ、先ほどの水の音、川になって流れてる」
「敷地内に偶々川が流れていたと、聞いたことはあるな。それをそのまま利用したとも」
「川のせせらぎは気分が落ち着きませんか? 私はずっと聞いていたいくらい」
「そんなもんか? 俺はあまり頓着していなかった」
俺のジャケットを羽織りながら、無邪気に庭を歩く奏多を見ているほうが心安らぐと言ったら、奏多はなんて答えるのだろう?
髪は短くなったが、高校時代の奏多も、こんな風に無邪気に歩いていたのを思い出す。一人だったり、女友達とだったり、あの道で陰から見ていた俺は、それだけで癒されていたさ。
「おい、そんなに歩き回ると……下駄なんだつまずくぞ」
「なんだか楽しくて……。巽さんが一緒に居てくれるせいかも知れませんね」
「だからな……」
「???」
無邪気で天然、それでいながら思慮深い奏多の性格。こんな場所で、いかんなく発揮されるとは……。
俺の我慢だって限界ってもんがあるんだ。