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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第16章 聖の本気

受付を抜け出し、聖さんの後をついて行く私。周りはそんな不思議な光景に振り返る社員が居るくらい、不自然極まりないんだよね。高値の花である聖様と私、どう考えても接点なんて無いと見えるのが当たり前。
いたたまれない気持ちの中、聖さんに案内されたのは、私は殆ど来たことがない上階の重役フロアー。廊下も扉も作りが一般とは全然違う、同じ会社の中とは思えないくらい、内装に力を入れているの。
そのフロアーの端の一室に、私は通された。ここが聖さんが普段仕事をしている部屋なんだ。
「道は分かった?」
「なんとか大丈夫です」
「あまり固くならないで。僕は秘書とかは付けていないから、この部屋に人が入って来るのは少ない」
「そうなんですか?」
大きなデスクに鞄を置き、重厚な椅子に座る姿は、聖さんの家で見ていた時と大違い。しっかりとした貫禄があり、同じ穏やかなのに威圧感まであるように見えるの。
「だから、かしこまらないで欲しいね奏多。僕の部屋だけど、これからは奏多も一緒に過ごすことになるんだよ」
「それはそうですけど、雰囲気が全然違っていて……」
「奏多は見た目で人を判断するほう? 僕は違うと思っているよ。家でも会社でも僕は僕、中身は一切変わらない」
「それもそうですね」
「初めての場所で緊張する気持ちは分かるよ。でも退社後は、奏多が一人でここに来ることになるのだから慣れないと」
そう……。退社時間に聖さんと連絡を取って、私一人でここまで上がって来なければならないの。幾らなんでも、聖さんが夕方のエントランスに現れるのはおかしい。だから私一人を選んだのよ。

