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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第16章 聖の本気

「大丈夫、先にこのフロアーの人たちには話を通しているから、誰も奏多を止めることはないからね」
「……聖さんを信じます」
「信じて欲しい、僕がどれだけ本気なのかを……。奏多はなにも心配しなくていいんだよ」
「……はい……」

それから一通り部屋の説明をされた。メインのこの部屋と、手前に小さな給湯室、それに狭いけれど泊まるためのスペースがあって、聖さんは動かずに仕事が出来るようにしてあるって話していた。

まだ仕事は始まったばかり。いつまでも聖さんの部屋に居るわけにはいかない私は、エレベーターに乗ってエントランスまで降りているんだけど……。

(どう朝陽に言おう)

バレても構いはしないと聖さんは言ったよ。でもね、はいそうですかと簡単には言えないと思う。だけど私を見ていた朝陽の瞳……。

(どちらかといえば疑いの瞳だった)

朝陽に嘘は吐きたくないの、それなのに私は嘘……というより、本当のことを黙っていなければならないのが辛い。連絡が無かったのも私の体調を気づかってまで言ってくれた朝陽、なのに私は……。

考えが纏まらないうちに、エレベーターはエントランスに到着。受付嬢なんだから受付に居るのが当たり前。泣いても笑っても、受付に戻らないといけない。

「……もう終わったの奏多?」
「うん。急に抜けてごめん」
「聖様直々だったら仕方ないでしょう。奏多なにしたのよ?」
「なにもしてないんだけど……」
「変なの」
「ただの話だよ」
「ふーん。でも聖様に目をかけられるんなんて、奏多やるぅー」

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