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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第5章 もう一人の社長息子

理解出来ないこの情況に困惑し、ベッドの上で動けずに居れば、二つある扉の一つが開いた。
中から出て来たのは……先ほどの『巽』と呼ばれていた人。
しかも風呂上がりの、腰にタオルを巻き、頭にはバスタオルを掛けている。
……やっぱり、私の身になにかあった!?

「やっと起きたか」
「えっ? あの、そのっ!」

面白そうに私を見るその瞳。
無駄な肉がないくらい、鍛えている胸板。
独特の男性の雰囲気。

はっきりいって、免疫の無い私は、この人の姿を見て、耳まで真っ赤だとは思う。
理想としては、本とか見て知っているけれど、本物の男性の裸を見たのは……一度きりな私の経験値では、この人の裸は強すぎる!

「??
どうした?」
「せ、せめて服を着て下さい」
「ん、服?
別段構わないだろう。これから外に出るわけでもないしな」
「私が構います!」

恥ずかしくて、恥ずかしくて、目をそらせて俯くしかなくて。
私のなけなしの経験値では、これが精一杯なのよ。

「なんだ、男の裸を意識してんのか?」
「ち、違っ……」
「ではなぜ俺のほうを見ない?」
「それは……」
「意識しているからだろう。……男としてな」

ギシッとベッドが沈み込む。それと同時に私は、この人に腕を掴まれ、少し強引に顔を上げさせられた。

「あ……」
「真っ赤だな」
「……恥ずかしいんです」
「俺は楽しいが」
「からかわないで下さい。えーと、なんて呼べばいいんでしょう?」
「名前か?
俺は伊礼巽(イライ タツミ)だ。
夏目奏多」
「どうして私の名前……」
「聖から聞いた。社の受付嬢だってな」
「聖様を呼び捨て……」
「兄弟だ呼び捨てでも構わないだろう?」

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