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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第5章 もう一人の社長息子
兄弟!?
聖様に兄弟が居るとは、あまり聞いたことがない。
でも、はっきりと兄弟と言ったし、聖様本人の前でも呼び捨てだったと思う。
聖様も巽と、呼び捨てだったし。
「信じられんか?」
「社内で見たことがありません」
「俺は正式に伊礼物産に属していない。見なくて当たり前なんだよ」
「ですがご兄弟でしたら……」
「出来のいい兄貴だからな、弟の俺としては、もう少し違う方向を目指したいんだ」
反論の余地なし。
打てば奏でる太鼓のように、すぐ切り返し答えを出す。多分この人は凄く頭が切れる。少し話しただけでこれだもの。後は考えなくても分かってしまう。
「と、とにかく、手を離して貰えませんか?」
「嫌だと言ったら?
また顔を伏せて俺のほうを見ないのか」
「それは……」
「だとしたら嫌だと言ってやる。折角の美人を見ないのは勿体ない」
どこまで本気なんだろう。
伊礼物産社長息子だったら、女性に困ることなんて無いはず。……なのにこの言葉、遊ばれているとしか思えないでしょう。
「冗談は止めて下さい。
それに……苦手なんです、男の人が」
「苦手?
こうしていて、なにも不自然感は感じないが、それでも苦手と言うのか?」
「普通に応対は出来ます。
でもそれ以上は……無理なんです。私で遊ばないで下さい」
人に……朝陽にでさえ言ったことのない秘密を、今日会ったばかりの、この人に話しているのだろう。
ずっと胸にしまっておきたかった思い。それを出させたのは、この人がこんな格好をしているから。