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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第17章 巽の本気

「ゴメン、言えない。でも、これだけは信じて、私は奏多を裏切ったり悲しむことはしていないわ」
「……朝陽……」
「…………」

それっきり朝陽は私と話すことなく、そのまま会社に着いてしまった。

「伊礼物産へようこそ。ご用件をお伺い致します」
「…………」

仕事時間に入っても、朝陽は口数少なく私と話そうとはしない。なにもしていないと言うのなら、話してくれればいいのに、一緒に居ても顔を合わすことすらしてくれないの。

(私、言ってはいけなかったのかな)

来客の応対をしながらも、考えるのは朝陽のことばかり。あの言葉を言ってから、あらかさまに私に対する態度を変えた朝陽。やはり聖さんと……どうしても考えがそこにいってしまうのは仕方がないでしょう?

(疑いたくはないよ。だけど一言も話てくれないなんて、私は朝陽とその程度の友達だったの?)

心配してくれたり、庇ってくれたり、私のことをちゃんと見てくれていた……そう思っていたのは、私だけの一方的な思いだったのかな。女性の友情は、男性が入ることで変わるとよく言われるけど、本当にここまで変わるなんて……。こうして二人で仕事をするのが辛い、朝陽の軽口がないのが辛い。
私は……朝陽を傷つけたの?
言った私が悪いの?
女性の友達でも、間に男性を挟んだ経験がない私にとって、今の朝陽にどういう態度をしていいのか分からず、私も朝陽に話かけられないでいる。

結局この日、朝陽とは会話することなく終業時間が来てしまい、朝陽は私を避けるように、さっさと帰宅してしまった。こんなのいたたまれない。

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