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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第17章 巽の本気
「……違う……」
漸く理由に気づいて、私はその場に立ち止まる。
私が嫉妬しているのは、私一人だけが知らないという疎外感からの嫉妬。みんな知っているのに私だけという思い、それが朝陽に嫉妬する原因なんだ。
(こんな私は嫌だと思う)
理由が恋愛感情ではなく疎外感だなんて、それは子供の我が儘に近い。それでも誰も話してくれないことに、悲しさと辛さが押し寄せて来るの。嫌な感情が私を押し潰すみたいな感覚。我が儘でも私は知りたかったんだね。
世の中には負の連鎖ということがある。私が負の感情に流されているから、呼び込む……悪意。
自分の思いに手一杯で、近づかれていることにすら気づいていなかった。
「……夏目さん!」
「……っ!?」
今の……声は……。
忘れられるわけがない、あの声は……三科さんの……声。
エントランスの陰から歩いて来る三科さんの姿に、私は恐怖で後ずさりするしか出来ず、三科さんが私に近寄るほうが早い。
「漸く一人になった。さぁ行こう夏目さん」
「……いや……」
「聞こえないな。あぁ近頃は聖様と宜しくやっているんだったか? そのおこぼれくらい俺にくれたっていいだろ、男に尻尾を振る淫乱女」
「ちがっ……きゃっっ!?」
腕を強く掴まれ、私は逃げたさに無我夢中で空いている片腕でもがく。男性の力に私が敵うわけがないのは分かるけど、人間っていざとなると予想以上の力が出ることがあるのよ。