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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第17章 巽の本気
「っ! なっ、このやろう!!」
「っっ!!」
正確には私がというより、私が持っていた鞄が、三科さんの顔面にヒット!
そのせいで、私を掴んでいる手の力が弱まり、三科さんを振り切り私は正面入口へと走る!
「待てっっ!!」
私また……!
止まったら捕まる、その思いだけで広いエントランスを走る。捕まれば私は三科さんの玩具、愛情もなにもなく道具として扱われると、本能が警告を鳴らすの。逃げなければ犯される、ここにあるのはそれだけの狭い世界。
「はぁはぁはぁ」
脇目も振らずに入口まで猛ダッシュ! また後ろから三科さんが追いかけているのは気づいているけど、会社から出れば巽さんが待っているはずだから、私は全力で走るしかない。……そう思っていたら。
「……奏多!?」
「…………え」
入口に居るのは……巽さん! 巽さんは走る私を捕まえてくれる。そして見つめるのは三科さんの方向。
「なんだお前は!!」
「なんだと言われてもな」
「社の人間か? 違うだろ。誰か、不法侵入者だ!!」
「ちっ、面倒くさい」
三科さんが大声を上げたせいで、エントランスに在中する警備の人が数人駆け寄って来てしまったの。
「不法侵入者ですか?」
「ああ、あの女を捕まえている男だ」
「失礼ですが、なにか身分を提示出来る物を所持しておられますか?」
どうしよう。巽さんは伊礼物産に正式に組みしていないと言っていた。ということは社員証一つ持っていないことになるよ。