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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第17章 巽の本気
そう思ったのに……。
「社員証ならあるが、見せて立場が悪くなるのは、お前のほうだがいいのか?」
「なんだと?」
巽さんはジャケットの内ポケットからカード……社員証を取り出し、警備の人に渡したの。
「……!
こ、これは失礼いたしました。本日は伊礼課長にお会いに来られましたか?」
「いや。彼女を迎えに来ただけだ。勿論伊礼課長……兄貴も知っていること」
「すみません巽様」
「ただの社員程度では、俺を知らんからな」
ニヤリと笑い警備から社員証を受け取り、巽さんが見るのは三科さん。
「ああ、名乗らなかったか。俺は伊礼巽、伊礼聖の弟だ。今年から兄貴の下で企画開発のほうも担当している」
「……なっ!?」
「さて、お前この女に怒鳴り追いかけていたな? 不法なのはどっちだ、逃げる女を追いかけるような社員など、うちの社には必要無い」
「それは本当でしょうか巽様」
「あぁ、見ていたからな。そうだろ奏多?」
「……はい、そうです」
警備の目が、巽さんから一気に三科さんへと変わる。
「事情を聞かせて貰いましょうか、営業の三科さん」
「お……俺は……」
「社の入口前です、迷惑を考えこちらへ」
警備に連れられて行く三科さんを見て、やっと緊張の糸が解れる。力が抜ける。今回も助かった、今度は巽さんに助けられた。
「……っ、おいっ!?」
「ごめんなさい力が……」
「よく頑張ったな。彼奴に鞄をぶち当てるところは見た」
「見てたの?」
「あまりに遅いから、社内に入って来たら顔面ヒットだったな」