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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第17章 巽の本気

広い家と価値観を結びつけたくはないけれど、聖さんの家や新しい私の家を見ちゃうとね、やはり違うと思ってしまうのよ。前のアパートのほうが一般的、短大から新社会人だと普通でしょう?

「こりゃ奏多の家で決まりだな」
「……どうしても?」
「どうしてもだ。一応確認のためってのもあるからな」
「確認……。はぁ、分かりました」

それを言われちゃうと、私に断る理由が見つけられない。店を出て『場所は知っている』と言う巽さんのなすがまま、車はマンションの駐車場に着いた。

「七階だったよな?」
「そこまで知ってる」
「だから詳細情報を見たんだよ」
「少し散乱しているけど、気にしないでね」
「模様替え中だからな」

渋々ながらも鍵を開ける私。実物を見たのは初めてらしく、巽さんは部屋の中をキョロキョロ見回して、なにかを考えているよう。

「セオリー通りの配置だと思うが?」
「私的には、もう少しこじんまりと使いたいんです。だから、ソファーからテレビの距離を狭くしようとか、キッチンを使いやすくしようとか……。あまり上手くいってないけど」
「テレビの大きさからして、このくらい離れていたほうがいいんだが。……あぁ、ソファー近くにスピーカーも設置されてるな」
「え? ……本当、気づかなかった」
「マルチサラウンドってやつだ。配置には意味があるってところ」
「なるほど……」

ただ置いているわけじゃないんだね。しっかりと計算して置かれてる、巽さんはそう言いたいみたい。

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