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第18章 心境複雑中

噂に戸は立てられない。昔の人は上手いことを言うよね。今の私はまさにその状態。知らん顔はしているけれど、噂され時々冷たい目で見られているのは知ってる。女性関係なんて聞かない聖さんだもの、それに合わせて巽さんだよ？　牽制したって無駄、部分的には本当なために余計に噂されることは分かるのよ。

「変に騒ぐより、なにもしないほうがいい。噂はされても直接攻撃されないから」
「そこまでかよ。少し甘く見ていた……すまん」
「大丈夫、それが普通だと私も思うから」
「奏多は感受性が強い。だから余計に噂が耳に入るんだろう。噂なんかいつかは消えるもの、そこまで深く考えるな」
「……そうだね」

いつか……いつか消えることにはなるよ、それまでの我慢と理解もしている。でも本当に消える？　聖さん、巽さん、どちらを選んだとしても、また噂になるのは私でも予想出来るよ。気にしないで……居られるかな私。

「必要なら俺と聖が多少細工するさ」
「そう！　巽さん、社内に居たんだね。それも聖さんのところに」
「あぁ。基本的に俺は日中顔を出さんから、知られていないのは当たり前。社に行くのも数日に一度なんだ、正式ってわけでもないだろ？」
「企画開発だと」
「俺の得意分野だからな。聖が持てあましそうな案件を俺が引き受ける。それでバランスが取れているんだ」
「聖さんって、なんでも出来そうなのに……」
「そりゃ偏見だ、聖にだって苦手分野はある。教育を受けたから、なんでも出来るわけでもなし、俺と聖を合わせて丁度いいんだろうな」