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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第5章 もう一人の社長息子

言葉通りに、巽さんはずっと私を抱き締めてくれる。
途中で仕事用に少し上げていた髪を下ろされたけど、これも嫌じゃなくて……。

「もう少し髪を伸ばしたほうが好みだな」
「巽さんの趣味に合わせるんですか私?」
「いや……ただ俺の好みなだけだ、気にしなくていい。
……そろそろ大丈夫か奏多?」
「え……あ……」

もう一度、頬を撫でられたんだけど、今度は嫌な感じはしない。
優しく触れる指の感覚。
思っているより巽さんの指が細いことに気づく。
細くて、長くて、繊細。

『トクントクン』

あ、また。
心臓が跳ねるような、高鳴るようなこの感じ。
私はドキドキしているの?
巽さんの仕草一つ一つに、心臓が合わせて跳ねるみたい。

「大丈夫、怖くないです」
「みたいだな」

あ、笑った。
話し方から想像出来ない無邪気な笑顔。
……でもあれ、なんだろう、既視感? この笑い方が誰かに似ている。
聖様に似たイケメン。
茶髪気味の髪を綺麗に整髪し、少しキツめの瞳に形よい唇。身長は高いと思った、多分170センチは軽くオーバーしているくらい。
長身で細身、でも男らしい。
私の知っている限りで、似ている男性なんて居ないのに、どうしてそう思ったんだろう?

変と思いながら、巽さんの顔を見ていれば、どんどんと近づいて来て、私の唇に巽さんの唇が重なる。
触れるだけの軽いキス。

『トクントクントクン』

もう分かってるよ。
これは私が巽さんにドキドキしているからだって。
こんなに優しくされたら、女性は誰でもドキドキすると思う。

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