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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第19章 奏多の本気
「それも理解しているよ。
僕たちも二人で奏多を愛でていたい気分だからね。でもそれは傲慢という身勝手な欲なんだよ奏多」
「…………」
「そんな身勝手な欲がいつまでも通るわけもなく、いつかはこの日が来るのを覚悟していた。……奏多の言う通り、ずっとこのままだったら、どんなによかっただろう。これ以上の幸せは僕の中にはないんだよ。でも時は来た、僕は……」
「聖……さん」
なにかに堪えるように、私を抱き締めて離さない聖さん。私の耳元に聖さんの顔があるため、今どんな顔をしているか私には分からない。だけど……辛そうな雰囲気が伝わって来るの。どうして? 私はまだ決めてもいないのに、なぜ辛そうなの?
「風潮というのは時に恐ろしい。奏多自身はそうは思っていなくても、周りというのは偏見という目で見てしまう。日本人の悪い風潮。少しでも列を乱せば、変わり種のように人を扱う。その風潮から避けるように暮らしていた僕が言えた義理ではないけれど、本音を言えば『くそったれ』とは思っているね」
「聖さんが、くそったれって……」
「僕も20代の普通に居る男なんだよ奏多。特別に育って来たかも知れないけど、中身なんてそこまで変わらない。少しだけ奏多や巽より年上なだけ」
「そんなことは思ってないから」
「奏多のように言ってくれる人は少ないからね」
「あ、それって……」
「そう、噂で騒ぎ立てる連中と同じこと。僕の場合は避けられてばかり。伊礼の息子というだけで、勝手な憧れと羨望という偏見で僕を見る」