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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第20章 ほんとのこと

朝陽はそれを拾い上げて、電源とおぼしき場所を押したの。少し血が付いてしまったのに、大切そうにテーブルの上に置き、次に朝陽は立ち上がりフラフラと玄関のほうに歩き出した。

「あ、朝陽!?」
「…………」

ただフラフラと歩く朝陽。お手洗いかなとも思い、少し間をおいてから私も向こうに向かってみたよ。
照明が点いているのは、お手洗いじゃなくバスルーム。いきなりのことに、私のほうが驚いている。

「ごめん、お邪魔するね」

脱衣所に入れば、脱ぎ捨てられた血が付いた服、それに……。

「……きゃっ!?」

カゴの中の物を見て、私は軽く悲鳴を上げてしまったの。だってそこには……長い髪の毛があったんだもの! でもよく見れば……。

「……え? ヴィック?」

そう。長い髪の束はヴィック……つまりカツラね。そんなものがここにあること自体驚きなのに、そのヴィックは朝陽の髪と同じ色、同じ長さ。不自然に思い、私は脱衣所の中を見回す。洗面台には化粧品、だけどその中に、女性では考えられない物も多数置いてある。男性用のシェーバーとか、スプレーとか、男女混合それが私が思ったイメージ。

(これって……なにがどうなっているのか分からない)

彼氏と一緒に住んでいて、男性物があると考えたんだけど、なんとなくスッキリしない。特にヴィックの説明が付かないよね。
本当はショートヘアーで、仕事で魅せるためにヴィックを使っていたとか、朝陽の趣味とか散々考えたんだけど、どれも当てはまらない、そんな言葉が合っていると思う。

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