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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第20章 ほんとのこと

ほぼ堂々巡りのような考えを繰り返し、どれくらい時間が経ったのだろう? シャワーの水が止まる音がして、バスルームの扉がガチャっと開かれた。

「…………え??」
「…………」

中から出て来た姿を見て、私はその場で固まる。向こうも視線を反らせ違う方向を向いている。でも、でも!!

「たつみ……さん……」
「……あぁ……」

バスルームから出て来た人は……巽さん。私と朝陽しか居ないこの場所に、突然のように現れたとしか思えない。だけど左腕の傷を見て私はハッとする。理由は後で聴けるだろうから、今は手当てしないと! だってまだ腕から血が流れているの!

「き、傷の手当てをさせて、お願い」
「……ああ……」

適当にあった下着と下履きだけ身につけ、巽さんは頭にバスタオルを乗せたままリビングまでは来てくれた。慌てて傷の手当てを始める私。……こんなに血が沢山、本当に病院に行かなくて止まるの?

「やっぱり病院に行ったほうが……」
「シャワーを使ったせいで、血が多く流れているように見えるだけなんだよ」
「でも……」
「そこまで深くない」

いつもよりぶっきらぼうな巽さんの話し方。なぜという疑問は山と浮かぶけど、本当に手当てしないと、いつまで経っても血は止まってくれない。傷口周りを消毒し、ガーゼに塗り薬を塗ってから、包帯で少しキツめに固定する。……これで止まってくれないと、本当に病院だよ。自分で切ったは通る? 私にはそちらのほうが心配。

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