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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第20章 ほんとのこと

「…………金森巽」
「……え?」
「奏多と同じ街に居た頃の俺の名前。金森巽に金森聖、離婚した母親の旧姓。だが金森朝陽というのは実在している、疎遠になった俺の従妹の名前」
「……金森……」
「こう言えば聞き覚えがあるかも知れんな」
金森巽……。
私は知っているの?
ずっと前を思い出してみる、高校時代にあった出来事を少しずつ。
「……あっ!」
そうよ。クラスは違ったけど、高校なんて二クラス合同授業とかあったじゃない? そんな時に確かに『金森』という男子学生が居たよ! 大人しめで影が薄いみたいな……どちらかといえばオタクみたいな雰囲気の人。それが……金森巽……。
「好印象……じゃないことくらい自覚している。方針だったかも知れないが、俺自体もあれにコンプレックスがあった。ただ周りを羨んで見ていたあの時期、唯一の癒しが奏多だったんだ」
「なぜ私?」
「奏多は覚えていないだろう。中体連のあの日、俺は奏多にぶつかってしまった。それなのに、あの見た目の俺を心配して、もし怪我とかあったらと、奏多は自分の名前を名乗っていった」
流石にそれは私の記憶にはないよ。でも巽さんとは中学時代に会っていたなんて……。二人の話を合わせると、てっきり巽さんが高校時代からの話だと思ってたの。
「おかしいだろ?
たった一度会っただけの奏多のために、同じ高校を選択し、女装までやってのける俺が。だけど俺にとって奏多は唯一の自由だった、俺個人が持てる憧れだった」

