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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第25章 社長の前での決断
『伊礼物産へようこそ』
『ご用件をお伺いします』
『えぇー私? 私は金森朝陽、よろしくね』
流れる朝陽の声。数日前まで普通に聞いていたのに、こんなパソコンから出力される音声として聞くことになるなんて。でも……。
「朝陽の声だぁ……」
「変なところはないか?」
「うんん。私にはちゃんと朝陽として聞こえているよ」
「そうか、このままでよさそうだな」
私が聞いたままだけど、巽さんはキーボードを操作し、どこかに送信しているみたい。……でも朝陽の声。入社してからずっと一緒だった馴染みのある声に、私のほうがホッとしている感じ。
「……これでよし。すまんな余計なことを頼んで」
「また朝陽の声が聞けたから……」
「やはり必要か朝陽が?」
「必要とかではなく、私にとって朝陽が居るのが普通だったから。でも……やるの巽さん?」
やりにくいとか、照れくさいとか言っていたじゃない。私も朝陽が巽さんだと知って、別の意味で意識してしまいそう。……大好きな巽さんだからね。
「どうなんだろうな。親父の公認が出れば、朝陽の役目はそこで終わりと思っていた」
「それって……」
「元々、奏多に邪魔な虫が付かないように、そして大きなバックが出来るまで守るのが、朝陽の本来の役どころだったんだよ。まぁ、俺の想いも入っていたがな」
「朝陽には助けて貰ってばかりだったもんね」
「まあな。特に三科には苦労させられたぜ」
三科さんから庇ってくれたのは朝陽。今回のことだけじゃない、三科さんが通るたびに、私を後ろにして朝陽が牽制していたの。