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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第25章 社長の前での決断

「行くぞ奏多」
「…………」
「……奏多?」
「……え? は、はいっ!」
「??」

思わず見とれていた私に、不思議な顔をして近づいて来る巽さん。至近距離は余計にドキドキするでしょう?

「どうした奏多?」
「いや、あの、その……巽さんのスーツ姿は、あまり見れないからつい……」
「ほう?」
「久しぶりに見たから……」
「素直に見入っていたと言えよ奏多」
「そ、そんなんじゃ……」
「……奏多……」

あ、ダメ。その姿で見つめられたら、私……動けない。薄く笑った巽さんは、私の頬を軽く撫で触れるだけのキスを落とす。こんなやり方、更にドキドキするじゃないの!

「……あ……巽さん……」
「いいなその表情。瞳をトロンとさせ、俺をうつろに見るのは悪くない」
「……私……」
「余計な用事がなければ、奏多を襲いそうだ」
「……へ?」
「だから、なければだ。今は移動することが重要だろうが。呆けていないで行くぞ」
「そ、そうだよね」

甘い雰囲気は一瞬で、先に玄関へと歩く巽さんに、私は慌てて追いかける。それにしても凄くドキドキした。格好よくあんな言葉を言われたら、誰だって私のようになるとは思う。それくらい今の巽さんは迫力十分。聖さんと同じく細身のイケメンだもの、もし普通に会社に居たら、聖さんと共に高嶺の花って呼ばれていたんだろうね。

(そういえば、朝陽も迫力美人。元がいいと、なにをやっても絵になるんだ)

私みたいなのとは作りが違い過ぎるよ。私は普通だもん、朝陽にも巽さんにも敵わないわ。

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