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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第25章 社長の前での決断
私の心配をよそに、車は会社の駐車場に到着。車を降りてもまだ不安が拭えない。ほら、ずっと風当たりが強かったから、周りの目が……ね。
「朝陽じゃ仕返しが手一杯だが、本来の俺と一緒なんだぞ奏多。だから安心しろ、俺が目立てば済むことだ」
「分かってはいるけれど、ずっとそうだったから」
「いきなりでキツいのは、俺が一番理解してる。逆に俺という餌で、引っ掻き回してやるのも一興だろ?」
「そんな考え……」
「そうだ。行こう奏多」
「……はい……」
いつも通い慣れた会社の入口、でも今日は特別に見えてしまう。エントランスに入れば、ザワッとざわつく声を聞きながら、私と巽さんは慣れ親しんだ受付へと向かう。
「伊礼物産へようこそ。ご用件をお伺い致します」
(私たちの前に居た受付の先輩だぁ)
「挨拶はいい。聖は個室か? アポは取ってある、巽が来たとだけ伝えろ、それだけで構わん」
「は、はい! 伊礼課長ですね、連絡致します」
「案内も不要だ。勝手知ったる社内に一々案内を付けられても困る」
「かしこまりました」
凄い……ベテラン受付嬢を簡単にあしらえる度胸、人を従えることを知っている話し方、巽さん……本当に別人みたい。
「連絡が取れました。伊礼課長がお待ちしています。その……巽様、夏目さん」
「そうか、行くぞ」
「はい」
人が好奇の目で見ても、離れた場所で噂をしていても、巽さんは一切お構い無し。考えてみれば、聖さんもそう……構うことなくエントランスを通りすぎる。二人とも分かってやれるのが凄いね。