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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第25章 社長の前での決断
「聖です、入っても宜しいでしょうか?」
「……ああ……」
聖さんが扉を叩き中へと声をかけると、一言だけ声が返って来る。確認は取ったと扉を開ける聖さん、室内には、ゆったりとデスクに座る社長の姿。
伊礼物産社長伊礼弦(イライ ゲン)。黒髪をしっかりセットし、顔立ちは父親だけに二人に似たイケメンタイプ。これで四十代後半だったかな? とてもその年齢には見えないほど若々しいのが特徴。でも、今の社長はエントランスで会う穏やかな感じではなく、重厚な椅子に座りながら、威圧感さえ覚えるほどに圧倒的な存在感を醸し出している。
「…………来たか」
座る社長と、デスクを挟んで並んで立つ私たち。まるで蛇に睨まれた蛙のように、私はその場から全く動けない。細めた瞳に射抜かれたと表現すればいいの? 普段よりキツい社長の瞳に、私の体が釘付けになった錯覚さえ感じるのよ。
「巽、傷の具合はどうだ?」
「もう大丈夫だ。そんなに深い怪我じゃない」
「聖、彼女を毎日部屋に呼んでいた理由はなんだ?」
「守るため。三科に狙われていたのは明白でしたので、彼女を守るために極力部屋に呼ぶようにしてました」
「なるほど。では巽、エントランスで女装などというバカなことをしていた理由はなんだ?」
「聖と同じ理由だ。彼女一人ではあまりにも危険だったんでな、あんな真似をしてでも守りたかった、それが理由」
いきなりストレートな質問。無駄は一切なく、核心だけを正確に紐解いて、巽さんと聖さんの様子を伺っているみたい。