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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第26章 もう過ちじゃない
あの頃を懐かしむような巽さんの瞳。嫌じゃなかったの? 色々拘束されていたって話していたじゃない。
「……もう一度戻りたい? 金森巽に」
「戻りたいかと問われれば、嫌だと答えるな。だがな、金森巽だったからこそ、奏多に出逢えたというのもあるだろ?」
「あ、そうだよね」
金森巽としてあの街に居たからこそ、私たちは出逢った。私は殆ど覚えていないのに、ずっと覚えていてくれた巽さん、そして聖さん。二人が居なかったら、私はこんな風に変わることなんて出来なかったかも知れない。
「今度は伊礼巽として、あの街を歩いてみるさ。前とは違い、意外な発見が出来るかもな」
「例えばどんな?」
「俺が知らない時期の奏多のことを聞き捲る」
「…………へ?」
「冗談だ。眼鏡越しでは見れなかった世界が見れるような気がしただけだ」
「……そう……」
あの街で見れなかった世界ってなんだろう? なんの変哲もない普通の街、私にはそんな印象しかないのに、巽さんは違うんだね。
「そう言えば奏多」
「はい?」
「やりたいことがあると言っていたよな?」
「あ、うん。試験が近いから、もう少し勉強したいなって…………あっ」
言わないつもりだったのに、私の……バカ!
「試験? 資格を取るのか?」
「あー、えーと……うん。受付をやってから、対応とか事務処理とか気になって、気づいたら秘書検定の参考書を手にしていたの。それが一度始めたら面白くて、本格的に資格が取りたいと勉強していた」
「へー秘書な。これは丁度いいかも知れん」