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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第3章 会社の顔
◇◇
「伊礼物産へようこそ。
ご用件をお伺いします」
「取引の話なんだが、営業の三科に取り次ぎを頼む」
「営業の三科ですね、かしこまりました。今連絡を取りますので、暫くお待ち下さい」
「あぁ……」
……それから。
これもまた予想外なんだけど、私と朝陽だけでエントランス受付をやることになったのよ。
なんでも『受付がずっと同じでは、社員や来客との癒着が生まれる可能性があるので、定期的に受付は変更している』というのが社長の弁らしい。
私なんかでは聞けるような人ではないので、人伝に聞いた話になるけれど。
伊礼物産社長、伊礼絃(イライ ゲン)。
一代で伊礼物産を、ここまで大きくした手腕の持ち主。
まだ40代だと噂になっている敏腕社長。凄いよね。
逆に言えば、私なんか手の届かない存在。
でも毎朝挨拶はする、受付嬢として。
直接話すことは無いけれど、私達が挨拶すれば必ず振り向いて頷いてはくれる。
細かいところまで見ている人だなぁーって思うよ。こんな人だから、会社を大きく出来たんだって。
「お待たせしました。
三科が此方まで来るそうです。ロビーでお待ちになられますか?」
「いや、此処で待つよ、ありがとう」
これが今の私。
それなりに受付嬢らしくなったでしょう?
裏で言葉使いについて、徹底的に前の受付嬢に仕込まれたのは内緒だよ。
言葉使いだけじゃない、来客する人の顔と名前、この会社の社員の配置等々、覚えることは山とあって、こうして正式にエントランスに立てるようになったのは、あの配置発表の日から更に一ヶ月後。
でもね、朝陽は簡単に覚えちゃった。私と能力が違うのが少しだけ悔しかった……とは言えない。