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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第9章 社長息子は眉目秀麗

走り疲れ、息が上がっていて、私はこれだけを言うのが精一杯。
だけど聖様は、私の一言だけで意味を汲み取ってくれたみたい。

「……だそうだ。
社内恋愛に制限を設けてはいないが、誰彼構わず襲っていいとは言ってはいないと僕は解釈する。
三科君、このまま立ち去るか、社内にて聴聞をするか、どちらがいいか選ばせてあげよう」
「……聴聞……」

その言葉を聞き、三科さんの動きがピタッと止まる。
新入社員にすれば、社長息子からの聴聞は解雇と同じ。勿論私も被害を受けるけど、同じことを他の女性にもやりそうな三科さんを懲らしめるためだったら、私も被害者として質問に答え、解雇になってもいいとさえ思えるよ。

「……どうする三科君?」
「……帰ります、伊礼課長」

三科さんは引き下がるほうを選び、私はホッとして体の力が抜ける。もう大丈夫だと。

「夏目君!?
そこに僕の車が停まっているから乗りなさい」
「……すみません」

優しい手つきで私を促し、聖様が助手席を開けてくれ、私はなんとか聖様の車に乗り込んだ。……そうすると。

「少し待っていて」

そう言って、車のドアを閉めてしまったの。
車の中から外を見れば、聖様が三科さんを呼び止めて、近くでなにかを話しているよう。
ただ三科さんは、その場から全く動かない。聖様がなにを言ったのか私には分からないけど、顔色を青くして俯く三科さんは見えた。

すぐに聖様が運転席に乗り込み、車が発進してしまったため、私が見たのはここまで。

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