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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第9章 社長息子は眉目秀麗
◇◇
三科さんから解放され、聖様の車に乗ったけれど、体の震えが止まらない。
私また男性が怖くなりそう、それくらい嫌な出来事だったの。
「大丈夫??」
「大丈夫……です」
そう口では言うけれど、この情況も私にすれば決して安心出来るとは言いがたい。まさか聖様に助けられるなんて……最近の私は滅茶苦茶だ。
「大丈夫という感じではないね、少し落ち着ける場所に行ったほうがいい?」
「適当な場所で車を停めて下さい。後は一人で帰れます」
「そんなに震えている女性を放り出すわけにはいかないよ。ではこうしよう、ちょっとの間、僕に付き合ってくれないかい?」
「聖様に……あっ」
幾ら憔悴しきってるからといって、本人に『聖様』なんて言ってしまうなんて!
……私、本当にバカだよ。
「『聖様』……ね。社内でそう呼ばれているのは知っているよ。でも僕は普通に呼ばれるほうがいい」
「……伊礼課長」
「……聖さん」
伊礼課長と言ったら、にっこり笑って切り返された。眉目秀麗の聖様の笑顔は貴重品とまで言われているのに、こんな簡単に見ることになるなんて、私は丸っきり思ってもいなかったよ。
「ひ……聖……さん……」
「そう。夏目さんは……奏多さんだったね、奏多と呼び捨てのほうがいいかい?」
「………っ!」
ドキッとする。奏多と呼んだ時の聖様が巽さんに似ているの。なぜ今思い出したのかも分からないのに、無性にそう思った。やっぱり兄弟だから?
「……呼び捨てでいいです」
「奏多、気を楽にして。
もう君を狙う者は居ない、緊張しなくても良いんだよ」