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社長息子は受付嬢を愛慕う(仮)
第9章 社長息子は眉目秀麗
直情型だが冷静さは失わない、それが巽の性格。
周りには隠しているが、兄である僕にまで隠すことはしない。
それには理由がある。『後継者問題』、巽はそれに関わりたくないという意思を示しているのが、巽の信条だろう。
僕は静観することに決めてはいるが。
『それにしても、聖が家に上げるとは、明日は嵐か?』
「彼女を家に連れて来ることには躊躇いはなかったよ。『彼女』だからね、躊躇するはずもない、違うかい?」
『……聖……』
「互いに想い焦がれていたのに、今まではこちらの事情でなにも出来なかった。
そろそろ柵から離れて、自分のために好きなことをしてもいい頃だとは思っている。……巽のように」
『俺を引き合いに出すのかよ』
「始めたのは巽だよ。僕も裏で後押しはしたけど、まさかあんな方法を使うとは思わなかったね」
『どうせ見て笑ってんだろうよ』
巽の決断。それは誰も予想していなかった行動と、僕が裏で手を回し確立させたもの。
巽の邪魔はしない、これも約束の一つ。
「今日は夏目さんを家に泊める。後はあんな痕を付けたまま受付になど立たせたくない、僕が手を回し数日休みを取らせようと思う」
『……そこまでか。
というより、奏多を一人じめか聖?』
「まぁそうなるね、この間のお返しくらいに考えて欲しいかな」
『……ちっ』
あの時、眠る彼女を巽に委ねた。だからこれはお返し、巽と同じく彼女に思い入れがある僕の、少しだけあった我が儘。
兄弟で、一人の女性に恋してしまったあの日から……。