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喪服奴隷・七菜
第12章 剃毛の契り
ブラウスに袖を通す。ライトイエローのノースリーブで
首回りに大ぶりのフリルが施されている。
襟ぐりは大胆に開いていて、一番上のボタンは胸のすぐ下
乳房の谷間が強調されるデザインになっている。
スカートはレザーフェイクの黒のミニスカート。
ひざ上20㎝で、かがめば中が見えてしまうだろう。だがサイズはピッタリだ。
清楚な七菜には、どうにも似つかわしくないデザインだが・・・
『こんな恰好で買い物に行けと?』
「当然、俺の命令は絶対だったよな?」省吾が睨みつける。
なにを言っても無駄だと諦めて
『でしたらお財布だけバッグから帰してください』という。
「金か、だったらこれを持っていけ」
自分の財布から1万円札を2枚抜き、裸で手渡された。
玄関に行くと、ハイヒールのサンダルが用意されていた。
なにからなにまで計算ずくのようだ。
「俺はいかないから、一人で買い物をして来いよ」と言いながら
首輪を外して送り出される。
ヘンなオモチャを仕掛けられないだけマシか、と自分を慰める七菜だが
その考え自体、異常な世界に染まってきたのかもしれない。

自分が勤めているスーパーに、私服姿で入るのは初めてだ。
いつもなら仕事終わりにそのまま買い物を済ませてしまうからだが
なんとなく照れくさい。ましてやこの格好、誰とも顔を合わせたくない。
入り口からそっと中を覗くと、青果コーナーで野菜を積んでいる従業員がいる。
奥の棚に陳列しているので、気づかれないかもしれない。
自動ドアが開いて、背後をそっと通り抜けようとした瞬間
『いらっしゃいませー!! あっ 店長!』
さっそく見つかってしまった。
日ごろ「お客様がご来店されたら元気よく挨拶」を合言葉にしていたのだが
今回に限っては裏目に出てしまったようだ。
年配のパートさんだった。
『あら店長、すっごくお似合い、5歳ぐらい若く見えますよ。
私もあと40年若かったらなぁ~同じ服が着れたのにぃ~』
思わずホッとする。お世辞にしても、イヤミを言われないことがうれしい。
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