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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人
「俺も、実は苦手」
綺麗な形の唇が動く。
「……人見知りする方だから、何話していいか、解んなくて」
ははっ、と彼の目元に笑い皺ができる。
人懐っこくて愛嬌のある笑顔。
パッと周りを明るくさせ、決してそんな風には見えない。
「初めてテーブルに付いた時、俺ね、作法の事で頭がいっぱいになってて。ガチガチで。
で、先輩に突然、『美麗くんの……』あ、美麗(ミレイ)って、俺の名前ね。『美麗くんの、すべらない話~』って、無茶ぶりされてさ。咄嗟に出たのが、ガキん頃入ってた、施設の話」
──施設。
ドクンッ……
心臓が一度、大きく跳ね上がる。
その後、ドクドクと全身が脈を打ち始めた。
「一気にスベって。全員、口ぱっかーん開いちゃって。
……で、先輩が、『スベらんな~。ってスベるわ。てか冷めるわアホ!』って……」
「………あ、あの」
膝の上に置いた手をギュッと握り締める。
自虐ネタだったんだろう。笑顔で話す彼の言葉を遮ってしまった。
でも、そうしておきながら、次の言葉が中々出て来ない。