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私を抱いて…離さないで
第1章 初恋の人

チラリと隣に目をやれば、斜向かいに座るホストの方へと体を向け、大山が楽しげに談笑している。

「……その、施設の話……って…?」
「ああ。別に………うん。
でも、その話したら、きっと冷めちゃうから」
「……いえ。聞きたい、です」

美麗の表情が、少しだけ曇る。
相変わらずの笑顔だけれど、目が泳いで落ち着かない。

「…………参ったな。
あー、じゃあ。……うん。解った。
でも、引かないでね。嘘でも笑ってよ。……約束」

こくん、と頷けば、笑顔のまま小指を差し出され。指切りげんまん、をした。

絡めた指。──触れた所が……熱い。


「えーっと、俺、……小二の時、かな。
施設に預けられた事あって。
そこ、こじんまりとした園みたいな所じゃなくて、学校並にでかくてさ。……まぁ、その分人数も多くて」

──マンモス施設。
確か、そう呼ばれていた。

近隣住民からは、施設があるから治安が悪くなったとか言われて。余り良く思われてなくて。何かトラブルがあるとすぐ、『施設の子』がやったに違いないと、怒鳴り込まれた事が何度もあった。

「……で、学校で給食費が盗まれる事件があってさ。問答無用で、俺、居残りさせられて。
でも、他にも帰んないで席座ったままの奴がいるから、そいつらの顔見たら……全員施設の奴らでさ」
「……」
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