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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
酒と煙草、化粧品と香水の混ざった臭い。きっと、他の席で付いたものなんだろう。

「ごめんね。折角来てくれたのに、長い事待たせちゃって」
「……ううん」
「オレンジジュースでいい?」

飲みかけのグラスを下げ、新しいグラスに氷を入れる。
他とは違い、殺風景な卓。
細客だと、一目で解る見栄え。

「……あの、少しなら持ってるから……何か頼めないかな……?」
「少しって?」
「お金。……10万くらい」

グラスに、オレンジジュースが注がれる。グラスに色が付いていく間、美麗はずっと黙ったままだった。
その沈黙が、妙に緊迫感を与える。美麗の表情は、変わらず笑顔なのに……

「……前にも言ったけど」

ペットボトルの蓋を閉め、定位置に戻す。

「果穂ちゃんが来てくれるだけで、俺は嬉しいから」

スッと、目の前に出されるグラス。
その所作は、初めて会った時とは違い……無駄がなくて。
美麗の笑顔にも、あの時とは違う何かを感じた。

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