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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
ドクン、ドクン、
整わない呼吸。熱くなっていく頬。
心臓が破裂してしまう程、ドキドキして止まらない。
「何でかな。果穂ちゃんといると、凄い落ち着く──」
触れていた指が、スッと離れる。
何に戸惑ったのか。台詞を吐いて直ぐ、美麗の瞳が大きく揺れた。
「前に、話したよね」
「……」
「俺、施設にいたって」
僅かに伏せられた美麗の瞳に、陰りが見える。
何時になく、静かで真剣な口調。
「……色んな蟠りがあって。家族も友達も過去の自分も、全部捨てたかった……
この街に飛び込めば、本当の居場所が見つかるかもしれないって。
でも、結局。……俺は、積み重ねてきた過去の上に存在するんだって。そう、思い知らされた……」
「……」
「だからかな。果穂ちゃんを見てると、思い出すんだよ。……まだ汚れてなかった頃の、俺自身を」
「……」