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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…

どうして祐輔くんは、ホストになろうと思ったんだろう……


祐輔くんが戻ってくるのを待たず、ホストクラブを後にする。

繁華街に吹く風は、照明と人の多さのせいか、少し生温かくて濁っている。
汚れた空気を吸っていれば、内側から侵蝕していき……そのうちに汚れていく。
それは、私も同じ。
私の中には、既に黒くて嫌な感情が巣くっている。……多分、施設で過ごしていた時から。ずっと。


「──!」

突然震える、スマホ。
もしかして、祐輔くん……?
取り出し画面を見れば、表示されていたのは……

「……もしもし」
『もしもし。果穂ちゃん?』

安藤先輩。
相変わらずの、爽やかな声。

『今、何処にいるの?』

街の喧騒。すぐ近くの店で流れている曲が、回線を通しスマホを当てた耳からも入ってくる。

『後ろ』
「……え」
『後ろ、向いてみて』

言われるまま振り返ってみれば、スマホを耳に当て、此方に手を振る安藤先輩の姿があった。


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