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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…

こじんまりとした、居酒屋。
一品一品、店の壁に張られたメニューの紙は、寄れたり薄茶色く変色し、年季が入っている。
座敷席は、懐かしい畳。テーブル席とカウンターの間には、背の低い本棚。取り揃えた漫画も、随分と古い。
カウンター奥では焼き鳥が炭火で焼かれ、その香ばしい匂いとそれなりの煙が店内に広がっていた。

何となく断れなくて、先輩の誘いに乗って食事をする事になったけど……
まさか、こういう……ディープな店に入るなんて、思いもよらなかった。

「ここの焼き鳥、結構美味いんだよね」

たれももの串を、先輩が器用に頬張る。
何となく……勝手なイメージだけど。もっとお洒落な店しか、行かない人なんだと思ってた。

「……」

でも、そっか。
私は大山さんみたいに、可愛くもお洒落でもないから、そんな気取った所に行かなくてもいい……って事だよね。
たれももの串を取り、静かに一口頬張る。

「──!」

……美味しい。
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