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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
バイトが終わって、店を出る。
夜空を見上げる余裕もなく、崩れ落ちそうになる身体を引き摺って歩く。
「……」
逢いたい。
一目逢いたい。
祐輔くんの、声が聞きたい。
……でも。
そんなの、お金のない今の私ではダメな事くらい解ってる。
解ってる。
ふぅ…、と俯き加減で大きな溜め息をつく。息を吐ききった所で、ぽっかりと空いた心に虚無感が襲う。
それをどうにかしたくて。でも上手く出来なくて。……誰かに寄り添いたい気持ちばかりが大きく膨らんでいく。
抱き締めて欲しい。
頭を撫でて、大丈夫だよって言って欲しい。
……優しく、笑いかけて欲しい。
これまでの美麗くんが、施設で助けられてからの祐輔くんが──走馬灯のように、脳裏に浮かんでは消えていく。その度に、胸の奥がきゅっと締めつけられて──
「……」
……助けて。
私を助けて。
祐輔くんだけは、味方でいて。
あの時、みたいに──
──ブブブ、
突然、ポケットに入っているスマホが震える。