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私を抱いて…離さないで
第2章 人と金と…
すん、と鼻をすすり、折り曲げた人差し指で下瞼を拭う。
“終わったら、電話して”──スマホを取り出そうとして、安藤先輩の声がふと蘇る。
あの時の、先輩の吐息。
爽やかだけど、柔く肌に掛かって……おじさんのそれと記憶が重なり、思わず耳と首筋に手を当てる。
「……」
おじさん程の嫌悪は感じ無かったけど……やっぱり、嫌だった。
嫌に、決まってる。
好きでもないし、気を許してもない。
援交の様に、割り切った気持ちでいた訳じゃない。
……もう、関わらないで欲しいのに……
気乗りしないままスマホを取り出し、画面に表示された文字が瞳に映れば、瞼が大きく持ち上がっていくのが解った。
「……」
『もしもし、果穂ちゃん?』
耳に当てたまま、息が止まる──
ずっと不安で仕方がなかった私の心に、抵抗無くスッと入ってくる、祐輔くんの明るい声。
たったそれだけ。なのに、不安が泡のように弾けて消えていく。
胸の奥から熱いものが込み上げ、容易に涙腺を緩ませる。
さっき拭い取ったばかりなのに──もう下瞼の縁に涙が溢れ、頬骨の上を掠めて零れ落ちる。
“終わったら、電話して”──スマホを取り出そうとして、安藤先輩の声がふと蘇る。
あの時の、先輩の吐息。
爽やかだけど、柔く肌に掛かって……おじさんのそれと記憶が重なり、思わず耳と首筋に手を当てる。
「……」
おじさん程の嫌悪は感じ無かったけど……やっぱり、嫌だった。
嫌に、決まってる。
好きでもないし、気を許してもない。
援交の様に、割り切った気持ちでいた訳じゃない。
……もう、関わらないで欲しいのに……
気乗りしないままスマホを取り出し、画面に表示された文字が瞳に映れば、瞼が大きく持ち上がっていくのが解った。
「……」
『もしもし、果穂ちゃん?』
耳に当てたまま、息が止まる──
ずっと不安で仕方がなかった私の心に、抵抗無くスッと入ってくる、祐輔くんの明るい声。
たったそれだけ。なのに、不安が泡のように弾けて消えていく。
胸の奥から熱いものが込み上げ、容易に涙腺を緩ませる。
さっき拭い取ったばかりなのに──もう下瞼の縁に涙が溢れ、頬骨の上を掠めて零れ落ちる。