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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
《今日、菱沼に絡まれたんだってね》
《大丈夫?》
バイト終わりに携帯を見れば、安藤先輩からメッセージが入っていた。
『釣った魚には、適度な餌しかやらない』──AV出演の一件で関わった、柄の悪い人がそう言っていたのを思い出す。
だったら。敢えて釣られたふりをしていれば、そのうち私の事なんて興味が失せていくだろう。それにもし、私が真面目で純潔だと思っているのなら……援交の事実を知った時点で、きっと軽蔑して離れていく筈。
そうなれば、AVの一件での首謀者が誰であれ、私への卑劣な行為もなくなる筈。
〈はい。大丈夫です〉
送信ボタンを押して、携帯を仕舞う。
そんな割り切った考えで、全てを片付けてしまっていいのか解らない。
罪悪感なら、ある。あの日、お金を盗まれて一文無しになった私を助けてくれたのは、安藤先輩だから。
「──!」
仕舞って直ぐ、携帯が震える。
取り出して画面を見れば、コールは安藤先輩から。
こんな時に、先輩と話をする元気なんてない。重い気持ちのまま、通話ボタンをタップする。