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私を抱いて…離さないで
第3章 パパ
『もしもし、果穂。バイト終わった?』

相変わらずの、優しい声。
祐輔くんのそれとは違う、もう少し気楽で軽い感じだけど。

「………はい。今終わった所です」

でも、これからはかせという人と会って、今日のお詫びをする事になってて……

『まだ店?』
「え、……はい」
『じゃあ……今から迎えに行こうかな』
「………」
『っていうか、もうそこまで来てるけどね』
「………え」

驚いて顔を上げれば、大通り側では無い、外灯の少ない公園の脇道から、大きく手を振る先輩のシルエットが見えた。

──え、どうして。
バイト先、教えた事無いのに……何で……

「驚いた?」
「……」

微動だにしない私の目の前に立ち、先輩が爽やかな笑顔を向ける。

………何て言ったら、いいんだろう。
もし私が、最初から先輩の事を好きだったとしたら。
もし私が、早々にあの取り巻きの仲間入りをしていたら。
こんな事をされて、嬉しいとときめき、感激して……もっと先輩を好きになったりしたんだろうか。

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